第3巻第8号 昭和2年8月発行 (1927年)
http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-08/03-08-0566.pdf
−鉄道工事−
- 東京地下鉄道
- [東京府]東京地下鉄道会社の第一期線(第1巻第2号、第1巻第5号、第1巻第9号)が9月末には完成、10月初旬開通の見込み。すでに第二期線上野万世橋間1マイル3分の建設に着手した(第2巻第8号参照)。停留所は末広、万世橋の2カ所。なお万世橋下は市土木局橋梁課が35万円をもって請負い現在の10間幅を20間幅に改め替えることになった。この第二期線工事は大林組、大倉組、清水組の3社が競争入札の結果大林組に落札。1マイル当たり300万円。これを第一期線工費1マイル当たり400万円に比べると100万円もの差がある。それだけ建設費が安くなった。(第4巻第3号で第一期線特集)
- 目白駅
- [東京府]近く改築工事に取りかかる。小荷物取扱い口、改札口、階段等を拡張する。
- 地方鉄道
- 箸蔵登山鉄道(徳島県三好郡箸蔵村内25チェーン)、境鉄道(鳥取県西伯郡余子村−渡村間5マイル50チェーン)、揖斐川電気(岐阜県安八郡神戸町−揖斐郡大野村間4マイル)、水波電気(富山県射水郡新湊町−東砺波郡若村間11マイル56チェーン)、相武電鉄(神奈川県高座郡大野村−橘樹郡高津間16マイル50チェーン)、相武電鉄(同田名村−愛甲郡愛川村間3マイル40チェーン)、関東鋼索(群馬県群馬郡伊香保町地内1マイル20チェン)
- 市外電車
- 東京郊外の交通機関新設認可申請中のもののうち、京王電軌、下総急行電鉄、渋谷電軌の3会社に対し許可。
建築工事
- 宮内省
- [東京府]宮内省では皇太后の住居として青山御所西北の権田原近くに御殿を造営することに。予算60万円、約600坪。
- 皇后陛下
- 皇后陛下の発案で作られた「『青い眼のお人形』の家」について。延べ坪37坪6合の家を1/5の模型にしたもので総桧造り。
- 日本インターナショナル
- 日本インターナショナル建築会発会式が7月2日に挙行される(@京都四条通万養軒)。メンデルゾーン(独)、コルビジェ(仏)、ピーターペレンス(英)、タウト(墺)など海外著名建築家に会員・顧問になるよう依頼中。
- 運動王国
- [東京府]早稲田大学では西部電鉄上保谷駅西方3万坪に総合グラウンドを建設する予定。工費40万円。野球場、テニスコート、ラグビー、ホッケー、1周400mの陸上競技場、50mプール。体育会クラブハウスも含む。
- 復興区役所
- [東京府]東京市の区役所再建について。浅草の4階建てを除き他は地階建ての市民本位のものにする由。牛込、赤坂、本郷は完成。麻布、小石川、四谷3区役所以外は設計済み工事に着手。
- 復興建築
- [東京府]東京市で耐震建築として復興されるのは総延べ坪約200万坪。うち大正13年以降4カ年間に復興されたものはわずかに2万坪に過ぎなかった。近年は材料価格の低下に政府助成金の締め切りが迫っていよいよ活気づいてきた。
- 帝国図書館
- [東京府]同館は来年3月竣工。約1300名を収容可能だがさらに本年度から内装改善を行なう予定(工費160万円)。
- 川崎銀行
- 7月1日から開店。4階建鉄筋コンクリート造、総延べ坪1129坪、ルネッサンス式。
- 横須賀
- [神奈川県]横須賀海軍工廠の本建築が完工、7月3日に移転。鉄筋コンクリート2階建、耐震耐火に重点を置いた近代的建物。工費約16万円。
- 文化兵舎
- 麻生三連隊の兵舎について。来年7月までに工費約300万円で鉄筋コンクリート4階建、建て坪9000坪を建設する。地下室は大浴場、一階は炊事場、二階寝室、三階は「電化大食堂」で一個連隊1500名が一度に食事の出来る壮大なもの。
- 上野公園
- [東京府]東京市が上野公園の大改造に着手。動物園を中心に博物館前一帯その他付近を改修、来年3月完成の見込み。
- 温故学会館
- [東京府]塙保己一翁の手による郡書類従等の原本を保存すべく昨年来から建設中だった温故学会館と倉庫が3月に竣工。7月2日に落成式を挙行。
- 東京駅前の地下室工事
- 第2巻第4号報の東京駅前広場地下施設の工事進捗。目下35尺掘り下げ。骨組みだけで工費10万円、本年度中に完成。
−港湾工事−
- 重要漁港
- 漁港間の連絡鉄道建設について農林省が鉄道省へ申し入れ。公共の利益に合致すればその敷設に異存なしと鉄道省。
- 港湾法制定
- 土木事業の諸施設に重きを置く現内閣、工事振興のために港湾法を制定へ。
- 関門海底
- [福岡県][山口県]関門トンネル工事。目下海中30mのボーリング作業を実行中。作業に使う浮足場は高さ40フィート縦43フィートの鉄筋コンクリート製台盤に直径高さ各16フィートの円筒形空気タンク(353トンの浮揚力)4個が据えてある。(第3巻第9号「関門間大瀬戸地質調査浮足場」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-09/03-09-0574.pdf)
- 東京市
- [東京府]大正8年着工の隅田川河口改良工事につき、昭和3年度以降に要する経費1267万円の1/3の国庫補助金を交付することに。明年度予算に計上するため近く閣議に提出する。第1巻第6号、第2巻第5号に関連報。
- 本邦最大の浚渫船
- [北海道]石狩川治水事務所が日本最大の浚渫船「昭和丸」を建造。ポンプ式、乗員25名、船体長110フィート、最大幅34フィート、深さ10フィート、喫水5フィート、吐出管全長3000フィート、全揚程30フィート、浚渫の深さ30フィート、1500馬力パーソン式タービンを有し1時間の浚渫量50立方坪、1時間の石炭消費量1トン半。工費約70万円。
−河川工事−
- 信濃川大河津
- [新潟県]6月24日、大河津分水堰が移動し水田5万町歩および新潟市水道に甚大な悪影響。復旧工事に要する経緯80万円を請求(内務省に?内閣に?)。(第3巻第12号「信濃川大河津自在堰復旧工事近況」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-12/03-12-0646.pdf)
- 目黒川の改修
- [東京府]目黒町の政友派町会議員、町民からなる目黒会が、町議会に対し目黒川改修促進を建議。
- 鶴見川改修
- [神奈川県]鶴見川改修工事について。県が同川の改修許可を与えた外国人がクロであることが判明、行政処分で取り消そうとしたが本人は行方をくらまし利権も他に売却されていた。県当局は目下途方に暮れている。
- 内務省
- 今後直轄改修河川の上流および支脈流に対し、地方において改良工事をなす場合は1/2の国庫支出をなすべく検討中。明年度予算編成に際しては特に重要案件として閣議提出する予定。
- 流域砂防工事
- [神奈川県]20年計画380万円をもって県下各流域の砂防工事を行なうことに。まずは早川流域の工事に着手。
−道路工事−
- 四間道路舗装
- [東京府]東京市牧土木局長は山の手方面の四間道路20万坪を950万円で来年度より向こう4カ年事業で舗装へ。
- 内務省新計画
- 都市計画法を施工しつつある全国70都市余りに対し、街路費の1/3を補助する案を立てた。補助総額4600万円、昭和2年度以降10カ年支出。
- 帝都の道路
- [東京府]市土木局では先般来舗装道路の夏期大掃除とこれに通じる全ての道路のマダカム舗装工事を進めている。
- 大阪市都市計画
- [大阪府]長堀線のうち、末吉橋から上本町二丁目までの路面拡張工事がこのほど完成。
- 大阪市で
- [大阪府]久しく工事中だった都市計画線北野線がほぼ竣工。今は中央軌道工事の一部を残すのみ。
- 大阪市
- [大阪府]大阪市都市計画事業・天神橋西筋線が完成。
- 道路網完成
- [神奈川県]県下の道路復興事業は横須賀市を除くほかはほとんど完了。
- 大阪市の交通難
- [大阪府]関市長曰く「交通整理政策上より高層建築の(法的?)制限も必要だが、要するに金の問題」。瀧山都市計画次長は「実際は実に難しい、鋭意工事は急いでいる」。小林交通係長は「道路に伴う危険をいかに防止すればよいかを考えることが自分たちの仕事。工事方面はまず適法」。奥村土木課長は「交通難の悩みは近代都市の通性で大阪に限ったことではない」と。
- 多摩御陵
- [東京府]国道新浅川駅から多摩御陵に通じる参道を、現在の7間幅から9間幅へ拡幅し歩道に街路樹を植える計画。完成は今年12月中旬。
−橋梁工事−
- 東洋一の釣橋
- [徳島県]三好郡吉野川に三好橋架橋。6月12日開通式。武藤政務次官、三邊知事その他多数名士が列席。
- 隅田川鉄道橋
- [東京府]日本最初の試みとして興味が持たれていた同橋架け替え工事(第3巻第3号に前報)は6月12日午前0時18分の下り805号貨物列車の通過を待って実施され、わずか2時間で完了した。第3巻第9号「隅田川橋梁200呎構桁更換工事」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-09/03-09-0579.pdf 参照。
- 多摩上流
- 丸子の渡し付近に東京・神奈川両府県の共同事業として架橋へ。長400間幅6間程度、工費約60万円のうち30万円は政府補助。
−人事ー
- 小川鉄道大臣
- 同大臣の歓迎午餐会が6月25日に開かれる(帝国鉄道協会主催)。参加者約300名。
- 谷口三郎
- 谷口三郎内務技師、6月28日に東京ステーションホテルで開かれた土木学会第48回講演会で『南米ブラジル旅行談』。
- 牧野雅楽之丞
- 牧野雅楽之丞内務技師、高等官二等に叙せられ復興局技師に任ぜらる。(7月19日)
- 重見禎三
- 重見禎三鉄道局技師→門司鉄道局工作課長。(6月2日)
- 小河原藤吉
- 鉄道局技師→門司鉄道局小倉工場長。(6月2日)
- 向笠金吾
- 鉄道局技師→神戸鉄道局勤務。(6月2日)
- 崎山律
- 鉄道局技師→東京鉄道局勤務。(6月2日)
- 伊藤孝治
- 鉄道省工事課退職→請負業西本組東京出張所勤務に。
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日本の廃道 nagajis (http://www.the-orj.org)