第3巻第4号 昭和2年4月発行 (1927年)
http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-04/03-04-0480.pdf
−奥丹後大震災−
- 三月七日
- [兵庫県][京都府]奥丹後地方で3月7日に大地震。峯山、加悦、岩瀬、山口、網野などの町村の被害甚大。阪神方面にも家屋倒壊や死者があった。昨年の豊岡・城崎の大地震よりも強烈。被害状況、死者数など詳報あり。
−鉄道−
- 東京市内外
- [東京府]鉄道改良工事。現時点で東京上野間高架線残部四線分、秋葉原高架線貨物船全部が来年度には完成される。上野以北大宮までの工事もほとんど出来上がることになる。
- 東京駅と上野駅
- [東京府]両駅で行なっている客車の操車作業をすべて田端駅・品川駅に新設中の操車場で行なうことに。東海道方面の列車は田端に、東北方面の急行列車及び長距離列車は品川で仕立てて東京駅から出発することになり、その他の列車は上野から出ることになる。
- 電車は現在
- の山手線循環はそのままで京浜間は山手線と一部併用しているものを独立しさらに延長新設し今年度末には赤羽駅まで延長運転される。
- 田端以北
- 田端以北は大宮まで2線増設中で貨物線は旅客線から独立、ともに運転能率を向上させる。東京駅は現在の操車場を廃して高架線の高さまで盛り上げ乗降場も増加して多年の問題となっている日本橋方面の東口も実現されるはずだがこれは2、3年後のこと。
- 秋葉原駅
- 秋葉原駅は日本最初の高架式貨物駅に改築されるが、取扱いは高架下の通路と取扱場と高架上の積卸場との間に建設される機械によって行なわれる。年300万トンの貨物量を処理。またここから千葉甲州方面を連絡する新設備ができ、両国駅から東京上野線が十字に乗越してお茶の水駅に連絡するから東西南北の連絡が完成する。
- 上野駅
- 上野駅は新たに地上乗降口が4カ所増設され、地下線との交差に新設備ができる。王子赤羽川口駅も大改築されて非常に便利になるから大森中野方面以上の発展を見せて通勤者のために忙殺されるであろう。
- 四谷のトンネル
- 四谷駅と信濃町の間に出来る御所トンネルは、地盤不良のため延長100尺を短縮する由。
- 関門海底トンネル
- [福岡県][山口県]工事の実測について陸海軍内務省により諒解を得、門司鉄道局と本省工務局下関派出所とで3月20日頃から着手する見込み。過去報いくつか。第2巻第6号、第2巻第10号、第2巻第12号、第3巻第1号
- 丹那トンネル西口
- [静岡県]2マイル半の工程のうち排水工事と危険を冒して1マイル33チェーン82の所まで導坑を進めているが、昨今もまた1秒13個の湧水を生じ、坑内湧水量は40個余りに。豪雨のごとき坑内作業。(第2巻第2号、第2巻第4号、第2巻第5号、第2巻第8号、第2巻第10号、第2巻第11号、第3巻第2号参照)
- 宇野桟橋
- [岡山県]高松港への連絡船乗り換え不便のため南側に移転し、幅40尺長270尺に拡張することになった。4月末までに完成のはず。
- ガード下の
- [東京府]上野御徒町付近の高架線下のスペースを貸し出している鉄道省、その権利が1穴1万円〜2万円で内々取り引きされていることに憂慮。
−建築−
- 伊勢神宮
- [三重県]式年御造営工事が進捗し、宇治橋架替も終わり、外宮御敷地工事は全部竣工、内宮御敷地地上工事も5月中旬には完成の由。
- 鹿島神社
- 鹿島神社の廻廊および屋根と平舞台を大改修。工費3万円、4月から着手。
- 東京市
- [東京府]中途で工事がストップしていた東京市政調査会館(第2巻第7号参照)、大蔵省の敷地不許可がいよいよ確実となり継続不能と見られる。せっかく3万円をかけ基礎工事を済ませたのに、その工事を元通りに取り除いて埋め立てすることは何ぴとの責任たるかに注目されている。
- スポーツクラブ
- [東京府]室内スケート場を中心施設とする大運動会館が、東京赤坂山王下に建設される。520坪・工費70万円、4月から着工。
- 巡査のアパート
- [東京府]月島と渋谷に巡査のアパート(木造2階建・244戸)が建設されることに。
- 厳島町
- 厳島町網の浦に伝染病院が建設されることに。鉄筋コンクリート造、1万3000円の起債にて。
- 明大の記念講堂
- 鉄筋コンクリート3階建て・建て坪500坪で4月起工、年内竣工の予定。
- 新魚市場
- [広島県]広島市大手町九丁目裏海岸入江約2000坪を埋め立て、魚市場を建設することに。工費20万円、既着工。
- 百万円の三会堂
- [東京府]震災で焼失した赤坂の三会堂、某氏の寄付により一昨年9月から再建が進む。3月20日落成式。鉄筋コンクリート5階建、坪1000坪。
- 中学校
- [東京府]日本一の設備の中学校として昨年9月に起工した東京市立一中がこの夏に落成見込み。先般着工の二中も今年中に落成するが、両校とも地下室屋上つきの鉄筋コンクリート3階建、「メンデルセンタイプ」のがっしりした建物。市建築課の板東技師設計による。
- キリスト教青年会館
- [東京府]同建物が神田美土代町に6月着工。工費100万円。鉄筋コンクリート6階建。
- 司法省
- [東京府]日比谷の司法省裏に鉄筋コンクリート3階建延べ坪314坪の文化アパートメントハウスが完成。小豆色の高尚なもの。内部諸設備完備。
- 京大
- [滋賀県]京大理学部大津臨潮試験所が工費2万円で改築され、3月中旬落成。
- 将校に建築
- 将校に建築技術を修得せしむるため、5月から本年(度)2月まで講習会が開かれることに。
- 東大工学部
- 東大工学部助手の谷口忠氏が建物の振動を調べる機械的装置を製造。耐震構造の研究に有力なものとして注目されている。
−道路−
- 東京府では
- [東京府]第一期都市計画事業として4388万円で大正10年から昭和6年に至る10カ年継続の事業計画を樹立。郡部における放射線、ならびに環状線18マイルを目下工事中であるが、工事費のうち800万円は受益者負担として7カ年に分納する。第2巻第10号関連報。
- 特別都市
- 2月23日、内務省において特別都市計画委員会開催。川崎次官以下各委員が出席し、東京および横浜の道路河川などの議案を審議。
−橋梁−
- 橋梁工事進捗
- [東京府][神奈川県]復興局で目下工事中の橋梁。第一出張所:八重洲橋、数寄屋橋、土橋、尾張橋、蓬莱橋、金杉橋、蛭子橋、祝橋第二出張所:江戸橋、水道橋、市兵衛橋。聖橋、豊海橋、中野橋、小川橋、鞍掛橋、大和橋、海運橋第三出張所:日本堤橋、美輪橋、駒形橋、蔵前橋、言問橋、清洲橋、茂森橋、浜園橋、横川橋、扇橋、黒亀橋、本村橋
- 近く開通する橋梁は
- [東京府」以上のなかで駒形橋が4月20日に、八重洲橋聖橋が4月25日開通。5、6月に入れば目下工事中の29橋がだいたい完成し橋梁工事も一段落となる。昌平橋、美倉橋、和泉橋、浅草橋の5橋は3月下旬から工事に着手。
- 日本橋
- [東京府]は大震災で花崗岩を焼かれ惨澹たる姿だったが、明治44年架橋当時と同じ石材を用いて震災前の姿に修復されることが決まる。工費20万円、本年内に仕上がる見込み。
- 三月七日
- [東京府]東京深川四の橋梁工事用のスチームボイラー長10尺直径5尺が大爆発。近傍の家を破壊し死傷者を出した。
−海港−
- 松江築港
- [島根県]同港の建設問題は森岡知事の尽力で実現に近づく。
- 石の巻北上川口
- [宮城県]北上川口築堤は未完成のまま10年来放置されて来た。破損も進む。町民一致工事完成の促進運動を開始。
−人事−
- 倉橋藤次郎
- 工政会常務理事。ジュネーブで開催する国際経済会議にわが国の工業専門委員として出席することに。
- 鉄道省の大移動
- 工務局長後藤佐彦、第二改良事務所長稲垣兵太郎、建築課長久野節ほか百余名の高等官が勇退。
- 鉄道省工務局長
- 鉄道省工務局長後任は現改良課長の加賀山学、改良課長には東京付近の鉄道計画に造詣の深い同課技師平井喜久松、第二改良事務所長に現国府津改良事務所長杉広三郎など。
- 稲垣兵太郎
- 鉄道省随一の技師。高等官一等。明治29年帝大工科出。
- 後藤佐彦
- 勇退後は南海電鉄に入り取締役技師長に就任。
- 久野節
- 鉄道省建築課長。勇退後は自ら建築事務所を開く。
- 池田嘉六
- 東京建設事務所長として命名があったが建設局の計画課長に昇進、その後任は岐阜建設事務所長の石川鼎。
−雑報−
- 土木学会事務所移転
- 鉄道協会内から東京駅前の丸の内ビルディング460号室(電話牛込6449番)へ移転。但し執務は相変わらず午後四時から。
- 機械講義録
- 工人倶楽部発行の講義録宣伝。
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日本の廃道 nagajis (http://www.the-orj.org)