第6巻第4号 昭和5年4月発行 (1930年)
http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/06-04/06-04-1228.pdf
※著名工事視察の手引
−復興−
- 3月26日開催の帝都復興祝賀式典に寄せた慶賀の一文。
- 復興せる東京市内道路及橋梁
道路 | 延長(間)/昭和3年 | 大正12年 | 大正11年 | 坪数(坪)/昭和3年 | 大正12年 | 大正11年 |
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国道 | 16,770 | 16,830 | 16,830 | 196,150 | 196,652 | 196,652 |
府県道 | 31,860 | 32,182 | 32,182 | 266,292 | 261,735 | 261,735 |
市道 | 508,684 | 506,251 | 497,264 | 2,359,021 | 2,326,768 | 2,282,689 |
合計 | 557,314 | 555,263 | 546,276 | 2,821,463 | 2,785,155 | 2,741,076 |
舗装道路 | ||||||
歩道 | 88,830 | 47,154 | 30,871 | 138,182 | 86,990 | 48,547 |
車道 | 64,933 | 38,864 | 25,393 | 356,351 | 218,970 | 149,571 |
合計 | 153,763 | 86,018 | 56,264 | 494,533 | 305,960 | 198,118 |
橋梁 | 個数/昭和4年 | 大正12年 | 大正11年 | 坪数/昭和4年 | 大正12年 | 大正11年 |
石鉄 | 55 | 133 | 148 | 930 | 1,475 | 1,623 |
鉄橋 | 199 | 54 | 46 | 32,158 | 9,582 | 9,053 |
木橋 | 245 | 336 | 346 | 10,142 | 8,825 | 12,988 |
木鉄混合橋 | 5 | 8 | 8 | 267 | 380 | 586 |
混凝土橋 | 3 | 8 | 14 | 221 | 415 | 521 |
合計 | 622 | 582 | 592 | 51,430 | 24,192 | 26,322 |
−鉄道・隧道−
- 起工された大阪市地下鉄
- [大阪府]2月29日起工式を挙行した大阪市高速電気軌道の地下鉄工事について。工法は路面開削式だが河底を横貫する個所も多く、地盤の関係からも東京地下鉄道の工事とは異なる施行も行なわれる。(第6巻第5号「大阪市高速道電鉄の地下鉄工事概要」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/06-05/06-05-1232.pdf 参照)
- 開通近き電車線路
- 近く工事完了して開通する電車は下のごとし。参宮急行電鉄 長谷寺−榛原間三マイル一畑電気鉄道 出雲大社神門前−川端間5マイル余り高野山電気鉄道 極楽寺橋−女人堂間1マイル秩父鉄道 影森−白久間約6マイル伊勢電鉄 津新地−松坂間11マイル
- 仏蘭西で大規模な鉄道電化の計画
- [海外]パリ付近の鉄道電化について、大規模の計画が発表された。電化のもっとも大きい線路はパリ・リオン・メデターラニアン鉄道であるが、この計画は費用が莫大な額に達するので一部分ずつ進められることになった。最近着手されるクロツおよびモダーン間84マイルで、セントピーアに至るまでの間は平坦で高速運転を行ない得べく、それから先は3/100勾配が続くことになる。供給電力は3つの小河川から得られる7発電所の電力を集めるものであるが、最初の鉄道電化に供する電力は割合に小部分であり、多くは付近へ配電されることになっている。鉄道用電流は第三軌道式を用い、架空式は大ステーションの個所のみに用いられる計画。
- 丹那隧道断層逢着
- [静岡県]熱海建設事務所所管丹那隧道工事は熱海口において断層に逢着し、掘削工事は一時中止しているが、断層に対する応急施設法としてセメンテーションを施工しつつある。排水坑より掘削機によって小孔を穿ち、そこから高圧のポンプでセメントを送り込み、割れ目に流し込んで固定せしめるもの。第3巻第6号、第3巻第7号、第3巻第8号、第4巻第2号、第4巻第12号、第5巻第1号、第5巻第3号、第5巻第7号、第5巻第12号。
−建築−
- 築地万年橋畔の東京劇場竣工す
- [東京府]一昨秋以来工事中だった万年橋畔東京劇場がこのほど竣工。5階建スペイン式の建築の粋を集めたもので、他の劇場には類のない装飾塔が隅切上部に聳え立つ。本舞台は間口13間、高さ21尺、電動回転装置による直径52尺の回り舞台、幅6尺の本花道、幅3尺の裏花道はともに組立式、客席は1階から4階に渡り1898人を収容可能。2階東西に貴賓観覧席、5階は広間及び観客の大半を一度に収容し得る大食堂、大休憩室にあてられ、建物の東南部を6階として地階から6階まで全部楽屋である。このほかオーケストラボックス、映写室、化粧室、ラジオ中継放送の施設もある。装飾塔の上部ならびに煙突にはネオンライトを用いて『東京劇場』とネオンサインで浮き出させ、夜間は品川沖からも望見し得る。第4巻第9号に関連報。
- 上野図書館新館落成
- [東京府]上野の帝国図書館では一昨年六月以来本館西脇に工費29万円で鉄筋混凝土造4階建・延べ坪444坪余の増築工事中であったがこの程完成した。15日落成式が行なわれた。この工事は明治39年外山博士らの主唱で在来本館が増築された時にすでに基礎工事までできていながら20数年間風雨にさらされていたもの。新館の建築様式は旧館と調子を合わせた近世式を採用し、座席は全部で450余り。
- 高島屋ビル設計公募
- [東京府]東京日本橋大通りの高島屋百貨店ビルは日本生命保険会社系の出資で工費約850万円をもって延べ坪8000坪の建物を建設する予定。一流設計事務所の競技によりすでにその設計が進められていたが今回都合によりこれを中止して一般建築家により案を公募することになり、その委員として佐藤功一、塚本靖、片岡安、伊東忠太、武田五一の諸博士および岡田信次郎氏ら嘱託せられた。
- 航空気象の観測所設置
- 中央気象台の手で新しく航空気象専門の観測所ができる。設置個所は東京−大阪−福岡−上海の航空路にあたり、箱根、亀山無線電信所付近、大阪木津飛行場内、福岡名島飛行場内の4個所。いずれも木造建築の30坪余りの小さいものだが航空気象の観測には100パーセントの威力をもつもの。飛行機の出発前に各観測所付属の無電を利用して航空全路の気象を集めて操縦者に上空の気流から雲、風の模様も詳細に教える。先月末から着工、5月までには完成の見込みだが箱根観測所はすでに竣工、観測に従事している。
- 鉄矢板で傾斜を防ぐ
- [大阪府]大阪市都市計画による地下鉄道工事は各方面から付近の高層建築にとって危険であるとの指摘がやかましくされている。市技術者連においても最善の方法が考究され、例えば淀屋橋本町間の東側にある日本生命会社の同建物(直接地下道に面しているのと奥行きが薄いのにその側面地下を50尺も掘り下げるので傾斜する危険が高いとされた)については、片岡安氏らと相談の結果、長尺の鉄矢板(少なくとも60尺以上)を打って建物の傾斜を防ぐことに。なお同地方の土壌は全体的に脆弱で高層建物の建築基礎工事にはよほどの注意を要する。
−港湾−
- 具体化した東京湾築港
- [東京府]東京市の事業中最大のものとなる東京湾築港計画はさる大正11年にその前提として予算総額1900万円をもって隅田川口改良工事に着手。昭和6年度に完工する見込み。工事内容は現在の第六台場から深川の洲崎六号埋立地に至る2440間の長い防波堤を築き、現在芝浦にある繋船岸壁の外にさらに芝浦一丁目地先500間を水深15尺ないし22尺に浚渫し3000トン級の船舶19隻もしくは500トン以下の小船であれば30隻を一度に係留することのできる岸壁を築き、現在の5倍、すなわち1カ年280万トンの貨物を取扱うことができるようになる。しかしこれも大東京の門戸としてはあまりに小規模ということで、西久保市長は当時一時打切りの状態となっていたのを、来年度から向こう10カ年計画・約2500万円の予算で一大拡張工事を開始することになった。水深も25尺まで掘り下げ防波堤も30間延長、新たに船溜まり4万4000坪を設置し、その周囲に防波堤281間を設け、繋船岸壁もさらに50間築造して1000間とし桟橋も170間を延長し、別に深川に426間、芝浦に490間の物揚護岸を設備し、筏溜まり16万2000坪、繋船場88万7000坪を親切、海底の浚渫で得た土砂で芝浦、月島、洲崎の各地先に合計90万坪の埋立をなし、更に陸揚げした物資の輸送方法として芝浦と越中島、浜町、品川方面を連絡する道路および臨港鉄道を敷設する。10年後にこの事業が完成した暁には1カ年760万トンの貨物を取扱い得る世界有数の大築港となる。
- 竣工近き坂出港
- [香川県]坂出港3カ年の継続改修工事(工費6万円)は残す所わずかに数カ月。
−発電−
- 音響防止の新式発電所
- [海外]発電所での音響防止策は近年大いに注目されている。米国ロサンゼルス電力電灯局では特にこの問題に取り組み、同局のサンフランシスコ第二発電所改築にあたっていろいろと新考案を巡らした。その結果音響防止設計のために特殊の音響吸収材料を使用することで配電盤室その他の場所の音響を著しく低減することができるようになった。この発電所は一昨年春に大洪水で損壊したもので、改築時に発電所床面をビーム建設とし、機械並びに建物の基礎とは特殊漆喰性のエキスパンション・ジョイントで連結するようにした。主要な補助設備もまた同様の処理。発電室自身は運転室の壁は全部中空式のものとし中心に藻土を充填した。窓は二重張り。天井には音響防止のフェルト。床上には厚さ1/4インチのリノリウムを施している。配電盤室でエボニーアースペストの配電盤を用いたこともまた音響防止の効果が伴っている。
−人事−
- 山口技師巌父逝去
- 第一改良事務所技師山口繁氏の巌父英太郎氏が3月4日逝去。享年84。
- 労農ロシアの鉄道へ招聘された我技術家
- 昨年来サウェートロシアより鉄道技術家の招聘申し込みがあり、このほどその人選が決定し下記11氏が出向くことに。3月14日出発。(技師)加藤加之氏、馬場倉蔵氏、大川国近氏、石黒定美氏、弘島昌氏(技手)木村菊松氏、陶山泰男氏、柿本榮次郎氏、清水喜太郎氏(鉄手)堀内常雄氏、大成義三氏。
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日本の廃道 nagajis (http://www.the-orj.org)