第6巻第5号

第6巻第5号　昭和5年5月発行　（1930年）

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http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/06-05/06-05-1243.pdf

※著名工事視察の手引

−鉄道−

丹那隧道掘削開始

［静岡県］丹那隧道掘削工事は残す所3981尺。西口1万1514尺、東口は1万119尺で断層に出くわしセメンテーションを施工、その個所を掘り終わった。目下の所一日約10尺近い進程を見せているが水はなお東口において25個、西口において5個を湧出しつつあり、西口の水量は優に横浜市に供給する水道を満たし得るほどもある。（4月17日）

九州伊佐線開通

［佐賀県］佐賀県伊万里線の終点伊万里から長崎県佐世保に出る伊佐線の一部、伊万里−楠久間2マイル5分（5km6）は去る20日工事を終わり、21日から伊万里線の延長線として営業開始したが、さらに楠久−今福間（長崎県北松浦郡間6マイル）もすでに軌条敷設中で、今秋9月頃には今福まで延長開通の予定。なお新線3マイル5分の中間に車山代駅が設けられ伊万里−東山間2マイル、東山代−楠久間に1マイル5分となっている。（次ページに有田川橋梁の写真あり）

余目鉄道中随一の大隧道

［島根県］［広島県］総資本金800万円をもって出雲今市と広島県三次を結ぶ大社宮島鉄道は起点を出雲今市から飯石郡赤名間の三区は起工認可済みで（nagajis注：原文ママ。抜けがある？）、須佐までは目下工事準備中、第四区赤名から広島県双三郡日下（江川支流神瀬川の合流地点）に至る約17マイルは総工費270万円で起工認可を申請した。この区間中県境に掘削する隧道は延長1マイルであり余目鉄道中随一、山陰線にも稀に見る大隧道で、総掘削費130万円近くを要する大工事。

鉄道混凝土の鉄道貨車

［海外］最近英国のテムブル・ミルスのエヌ・イー・アール工場で鉄筋混凝土体の鉄道貨車が製造された。従来の木造部のものがすべて鉄筋コンクリートの構造に換えられたもので床も周囲も屋根も全部コンクリートになる。

−橋梁−

竣工近き海門橋

那珂川口に架設中の海門橋について。付近の風光と対照して一層の美観を呈せしむることとし、鉄筋混凝土開腹無ヒンジ拱橋、長200m、4径間、有効幅員11m、電車単線軌条を通し得る設計。橋下は船舶の往来頻繁なため、これらに障害を与えざるよう1径間45.4m、拱矢6mとし現今我が国におけるこの種の橋梁中稀なる大径間。拱軸線には変垂曲線を用いてできる限り断面の経済化を計るとともに拱の有する曲線美を発揮せしめる設計になっている。総工費34万2000円、昭和3年起工以来順調な工程を捗り6月には竣工の予定。（都筑通督寄）（工事中の同橋写真あり）

−水道−

山口貯水地の堰堤工事

［東京府］東京市水道の第二期工事たる山口貯水地建設工事は予算決定と同時に用地約220万坪の買収に着手。年度いっぱいまでに215万坪の買収を終え、残る5万坪も本年度早々に全部終了することとなった。このほか4年度中の同工事の重なるものとして約70万円を投じて工事の機械化が計られ、昨年9月より貯水地の基礎工事とも見られる堰堤工事の一部に着手した程度で、工事が本格化するのは本年度以降となる。このため水道局も本年度施工部分に対して慎重に協議を重ねつつあり、堰堤工事を中心に行なう予定。この工事ではまず堰堤中心部の掘削を行なった上で起工の段取りとなるので、工費も約300万円が費やされることとなっていて、工事の開始により100尺のエレベーターあるいはディーゼルシャベル等の威力が発揮されるわけで、恐らく本邦水道界稀に見る大工事になおうと予想されている。

新潟県三条町上水道起工式

［新潟県］三条町の上水道敷設計画がようやく主務省の認可を得たので、去る15日貯水地予定地である南蒲原郡大崎村において起工式を挙げた。工費は総額約100万円の予定。

−水力発電−

鉄道省信濃川発電所4月1日より工事着手

［新潟県］鉄道省の同発電所工事、いよいよ4月1日から着手。6カ年継続事業、工費1000余万円。まず同発電取水口宮中の土地買収を行ない、取入口及び隧道通過地点買収費は大体3、40万円と予想せられている。鉄道省の意向としては該計画の実施を1日も早めたく宮中付近一部を買収し直ちに工事に着手する。工事は民間業者に請負わせる。発電所の計画内容は取水口を宮中に置き、隧道一本6マイル40チェーンを建造するというもの。その間浅川原に貯水地を置き、千住に第一期発電施設として2万キロ発電機3台を据え置くことと決定。前記隧道は径22尺で水量3000個、落差140尺、発電機の1台は予備として設置されるもの。取入口土木工事は順調に行って本年7、8月頃と予測されている。なお用地買収については同地が寒村であるだけに比較的容易に進むだろうとされ、買収法としては第二期工事を含む土地も収めようという方針であると伝えられる。第二期千住発電所の出力は8万5000キロを2本の隧道によって7000個の水量で（フール）発生させるもの。土木工事としては同地一帯が土地柔軟であるから工事は容易であるとされる。完成は昭和10年度末、発生電力の送電は11年度早々、その電力は東京に送られ1000万キロを消化せしめる。

広島電気の発電所完成

［広島県］広島電気株式会社が2カ年計画・総工費500万円で一昨年3月起工した瀧山川発電所（第5巻第8号「広島電気滝山川発電所工事」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/05-08/05-08-1083.pdf）がこのほど竣工。4月10日試運転ののち逓信省の認可を得、送電を開始することになった。

−建築−

度量衡検定所大阪支所建築近く竣工

［大阪府］大阪市西区川口町にあった商工省度量衡検定所大阪支所新庁舎は昨年5月より建築を始め、この5月末をもって竣工予定。北区扇町公園の西にあり、工費は35万8705円、鉄筋コンクリート地階共5階建、薄茶色タイルの瀟洒な建物。さすがメートル法の本陣だけに建て坪もメートルで475.525平方m、高さ18.65m。清水組請負。

暴露された米国式建築

［東京府］東京丸ノ内有楽館は震災で被災し応急修理を施していたが、これを永久的な建物ならしめるために大改修が進められている（佐野利器博士設計、清水組請負）。この改築工事にあたって、このビルを建築した米国某社の施工振りがいかにも粗雑極まるものであったかが判明し、東都建築界の米国万能主義の夢を破った。

復興費7億の使途

帝都復興にかかった7億円の内訳（東京市調査、単位円）

−雑録−

山田陽清博士逝去

北海道帝国大学教授正五位勲六等工学博士山田陽清氏は先月27日突然長逝された。富山県出身、大正2年東大工学科出身、主として水利学を修められ発電水力の大著あり。

京都美術館の設計懸賞募集

［京都府］予て計画のあった京都市の御大典紀念美術館はいよいよ近く実現することになり敷地も決定。その設計は特に指名せず一般から懸賞募集することとなった。賞金は一等3000円1名、2等1500円2名、3等1000円2名、佳作若干名（賞金200円）で、締切は7月15日。希望者は京都市営繕課あて2銭切手封入申し込まれたし。

日本住宅用の防盗装置募集

京都商工会議所内京都発明協会ではこのほど「日本式構造の住宅に対する防盗装置」案の懸賞募集を発表。懸賞金は商工省の補助を仰ぎ、1等500円1名、2等100円2名、3等50円5名、総計950円、応募締切りは7月末日。希望の向きは同会へ照会のこと。

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