第5巻第3号 昭和4年3月発行 (1929年)
http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/05-03/05-03-1009.pdf
※著名工事視察手引
−鉄道−
- 殆んど無進行だつた丹那隧道
- [静岡県]停滞していた丹那トンネル工事も昨年末からようやく湧水も減り軽土質から集塊岩へと岩相も変わってきたので導坑・水抜坑の進行も目処がたってきた。なお坑内温度は60℃くらいで坑夫は肌脱ぎで作業中の由。
- 揖斐川のケーソン工事
- [岐阜県]迅速なることと工事設備の最新最大なるをもって注目されていた揖斐川橋梁ケーソン工事、今年1月から第二線工事に着手。隅田川六大橋梁の工事にも当たった釘宮磐氏が工事主任としてあたる(第1巻第1号・万世橋ケーソン工事参照)。
- 鉄道展覧会
- 鉄道省では3月6日から20日まで東京三越において鉄道の工事、営業、その他一切に関する展覧会を開催する。
- 筑波高速鉄道
- [東京府]同線の上野公園地下開削通過について出願があり、東京市恩賞講演委員会にて審議。その結果原案の表土下12尺通過を60尺下通過に改めたうえで許可することに。
−建築−
- 鉄道省の新庁舎
- [東京府]ルネッサンス式の近代建築として設計。2月8日に発表された丸ビルと同じ規模のもの。
- 上野新駅
- [東京府]工事330万円で5月着工予定。
- 東洋一の市場
- [東京府]本年5月起工する東京市の隅田川口築地河岸の中央卸売市場について。敷地5万9000余坪、建て坪1万7000余坪、海陸の連絡設備など。工事費予算1600万円、昭和6年竣工予定。第2巻第5号に関連報。
- 京都市の中立小学校
- [京都府]同小学校の新築工事は5月中旬竣工予定。本館は長40間幅5間半中央に4間の袖を有するトンボ形をなし、建て坪300坪、鉄筋コンクリート3階建。別に貴賓室、地下室、雨天体操場なども。工費33万余円。
- 北平に大図書館
- [海外]外務省の対支文化事業部では文化化学と自然化学と両方面の発展を援助するため、北平に大図書館を建設する計画。工費500万円、伊東忠太博士の設計。
- 上海にも自然科学研究所
- [海外]外務省の対支文化事業部ではさらに上海に理化学研究所と伝染病研究所とを合わせたようなものを設立することに。鉄筋コンクリート造、工費200万円、設計は帝大内田祥三博士、清水技師。
- 神奈川三浦半島
- [神奈川県]初声村に御用邸建設のため約10万坪の土地を買い上げられた由。
- 東京市立第一中学校
- [東京府]麹町永田町の旧村井邸跡に建設、近く落成し4月開校の由。
- 国際飛行場
- [大阪府]大阪木津川尻の同工事は鉄骨格納庫その他も近く竣工。
−道路都市工事−
- 大東京の並木道
- [東京府]兼ねて工事中の帝都復興道路の随一、品川八ツ山、三ノ輪間の工事がまもなく完了。延長5730m、幅員44mの大並木道路。
- 奈良県
- [奈良県]吉野郡下北山村大字浦向の林業家40人余が笠捨土工森林組合を設立し、延長約2里の林道新設を計画中。工費約5万円、幅員8尺、これが実現すれば下北山村から瀞八丁へ出るのに非常に便利になる。
- 市直営の厩橋工事
- [東京府]5月開通予定。市直轄工事として工事費の廉価な点が各方面の注意を引きつつある。
- 昨年刎上橋を造った阪出町
- [香川県]鑿井水道を2ケ所に工事中。阪出港(坂出港)の浚渫は予定の8万坪のうちすでに1万5000坪を終わり目下は内務省および香川県の浚渫船3艘で一日200立方坪を浚渫しつつある。明年度竣工予定の琴平急行電鉄臨港線(建築費40万円)は用地問題に行悩み中だが、町ではさらに経費15万円で350間の臨港道路を計画中。
−下水−
−水力−
−会及び団体−
- 万国工業会議
- 本年10月25日から東京において開催される同会に提出予定の邦文論文はP37参照。
- 工政会
- 1月22日に電気倶楽部において講演会。内容は万国工業会議、世界動力会議についてで、古市、斯波、加茂といった両会議主脳その他役員の出席があり盛会であった。
- 土木建築請負業者連合会
- 目下政府が議会に提出中の『労働者扶助法案』に対し、土木建築請負業者連合会は業界の特殊事情を無視した法案なりとして反対運動中。2月12日には芝協調会館で全国業者の緊急大会を開いて大いに気勢を上げた。代案として『国営業務災害保険法』の制定を請願しつつある。土木建築請負業者連合会は第4巻第12号に第一回総会の報あり。
- 港湾協会 Harber Week
- 同会の今年度総会は4月24日大阪市において開催と決定、各港湾関係技術家、官吏、実業家など700名が参加する由。なお23日には大阪市の築港工事竣工式を盛大に挙行する由。
−雑録−
- 東京電灯の技術関係人事
- 前工営部長・神原信一郎氏→取締役付、赤沢政五郎氏→取締役付兼工務課千住出張所長、前企画課長安藤弥助氏→工務課長、前工務課長江沢亀次郎氏→同工事課長、山倉嘉一郎氏→工務課土木係長、中澤真二氏→工務課電気係長。
- 日本ヒューム管の活躍
- 導管界に一新紀元を画せんとしつつあるヒュームパイプについて。最近需要が増大し東京市東京電灯などでも大量に採用しつつある。さらに『柱』としても好評を博しランプポストなどにも応用されるに至った。日本ヒュームコンクリート株式会社は昨年夏に瀧山米太郎氏を専務に迎え社名も前記に変更。本社を京橋区三十間堀に移している。第1巻第10号、第2巻第8号に関連報。
- 箸蔵寺索道
- [徳島県]県の名刹・箸蔵寺に索道を建設する計画が持ち上がる。高松市の矢野金治氏発案、新箸蔵駅から箸蔵寺まで一里の山道に設置。竣工は8月中。
- 石州赤瓦一転機
- [島根県]島根県工業試験場では西洋建築用タイルの製造に着目し、石州赤瓦の原土を利用するタイル製造の試験を始めた。成績良好でさまざまな模様も表現できる。今後は瓦製造者にタイル製造を奨励指導し大量生産をしていく計画。
- 静岡県曳馬村
- 大黒橋架橋工事中にアセチレンタンクが爆発し死傷6名。
- 香川県
- 平賀源内の銅像を志度町に計画。
- 小河原藤吉
- 鉄道省を辞し川崎車輌株式会社設計部長に就任。
- 竹中治郎
- 工政会編集部の同氏は今回倉橋理事らの推薦で雑誌「工業商報」を発刊。
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