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第5巻第5号

第5巻第5号 昭和4年5月発行 (1929年)

第5巻第4号第5巻第6号

http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/05-05/05-05-1044.pdf

※冒頭写真変更

※著名工事視察の手引き

−鉄道−

逢阪山隧道排煙工事着手
滋賀県]東海道線大津山科間の逢阪山トンネル排煙工事、3月12日着手。送風機は日立製作所で製造中、3300V150馬力。工費約7万円で8月中に完成予定。
地下鉄第三期線とステーションビル
東京府東京地下鉄道会社、第二期線(上野万世橋間)が今秋にも開通するので、第三期線(万世橋神田間)に4月1日から着手。これにあわせ懸案のステーションビル建設も。雷門、上野広末町、本石町を選定。敷地100坪余りで工費は1カ所あたり平均100余万円、5階〜8階建、貸し事務所や中産階級相手の大食堂等も経営する。第4巻第9号に第三期線の関連報、第3巻第8号に一〜二期線のまとめ。
建設省建設事務所長会議
第56回議会を通過した116線建設工事(工費8000万円)について、予算振り当て・工事順序などを審議決定する同会議が4月20日行なわれる。4年度中に開催すべき路線は北海道各線の120マイルをあわせて約300マイル。
トンネル工事にセメントガン
千葉県]鉄道省房総線の安房興津−鴨川間のトンネル工事は畳築工のかわりに鉄網を張りセメントガンにてモルタルを吹き付けた。成績すこぶる良好、従来のブロック畳築(厚さ6インチ)の約半額となる面坪当たり工費11円ほどで仕上がる由。

−建築−

ゼネヴアに国際都市
海外国際連盟が募集していた連盟新会館の設計はフランス人ネノー氏のものを基礎案として採用することになり、近く起工。一方ゼネヴァに一大国際都市を建設せんとする計画が最近急速に進捗し、すでに完成された設計図案に基づき具体的な運動に着手することになった。第2巻第10号第3巻第2号第3巻第8号に関連報、第4巻第2号に入選図案集販売の報。
復興事業完成の紀念塔建設
東京府]8億の巨費を投じた復興事業の完成を記念し紀念塔建設を計画(by復興局)。工費約15万円。
大阪市港区
大阪府]大阪市港区磯路町三丁目に国技館建設へ。敷地5000坪、建築費150万円、直径36間の円筒形で高さ50尺。6月起工明年11月竣工予定。大日本相撲協会発表。
東洋一のモダン刑務所小菅竣工
東京府]工費140万円を投じて改築中だった小菅刑務所が竣工。各監房の棟は中央の監守塔から六方に放射状に伸び監房全体を監視することができる。作業場として木工、靴工、製材、染織、印刷、鉄工などの最新式設備の作業場完備。工事はすべて服役囚が従事。

−道路−

東京大阪間の自動車道路
福沢大四郎他数氏から東京大阪間の自動車道路建設につき各府県に認可申請がなされる。延長306マイル64チェーン、幅員6間以上で、東京八王子、静岡、岡崎、名古屋、大津、京都、大阪を経過するもの。工費約8000万円。
産業道路
懸案だった産業道路、開設の予算が成立し具体的な実施計画にとりかかる。本年度国庫補助額は200万円、延長40マイル分。
東京の要所に地下通路
東京府]東京市では銀座4丁目、日本橋、本石町、須田町、槙町、京橋などの十字路に地下15尺位のところで横断する地下通路を作ることに決着、計画と準備を進めている。東京地下鉄道会社に敷設条件として命じてある末広町の地下横断路もすでに工事に着手しており、今秋頃には東京市初の地下通路が完成する見込み。なお三菱地所部でも工費20万円を投じて東京駅より丸ビルに通じる幅6間2丁余の地下道を建設する計画。

−橋梁−

秩父の荒川にバランスドアーチ橋
埼玉県]県土木課が施行中の同橋は径間459フィート有効幅5.5mで簡単なる施工法をもって完全に施行されつつあるのは注目すべきことである。5月中に竣工予定。
埼玉県の戸田橋
埼玉県]恐らく日本一深い井筒工事をもって施行されている同橋について。荒川架設、東京府埼玉県を連絡し、橋の全長300間幅6間、中央径間は87.5mのカンチレバー式。基礎工事は河底地質不良のため深さ41.5mの井筒を沈下する。その他の橋脚も長70尺位の杭打を要する。基礎工事だけに約50万円の予算。本年6月頃より工事着手。
堂島川可動堰試運転
大阪府]4月4日、大阪市土木部において施行。(第3巻第1号本編「堂島川可動堰工事目下の状況」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-01/03-01-0425.pdf)、第5巻第4号第5巻第6号本編(「堂島川稼動堰の竣功」、http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/05-06/05-06-1050.pdf)。

−港湾−

(見出しなし)
内務省により実施される予定の工事について(以下)。
関門海峡第二期工事
福岡県][山口県]海峡西口より周防灘に至る航路を36尺に浚渫し東口における中央水道を26尺に浚渫、船舶の通航を整理するもの。総工費60万円、該計画中急施を要する個所を昭和4年度において施行する。
土崎港修築工事
秋田県]埋立、岸壁及び物揚場護岸、船溜浚渫、突堤。総工費225万円、昭和4年度−8年度継続事業。
小名浜港修築工事
福島県]埋立、岸壁及び物揚場護岸、防波堤、砂防堤、浚渫。総工費388万円。昭和4年度−9年度継続事業。
宮古港修築工事
岩手県]埋立、岸壁及び物揚場護岸、防波堤、浚渫。総工費220万円、昭和4年度−8年度継続事業。
浦戸港修築工事
高知県]埋立、岸壁及び物揚場護岸、防波堤及防砂堤、浚渫。総工費437万円、昭和4年度−13年度。
七尾港修築工事
石川県]埋立、桟橋及び物揚場護岸、貯木場、浚渫、総工費355万円、昭和4年度−13年度継続。
尾道港修築工事
広島県]埋立及岸壁、浮桟橋、小舟溜、浚渫、総工費410万円、昭和4年度−16年度継続。
博多港修築工事
福岡県]埋立及岸壁、防波堤、浚渫。総工費530万円、昭和4年度−17年度継続。
舞鶴港修築工事
京都府]埋立、岸壁及物揚場護岸、掘削及浚渫、貯木場、総工費230万円、昭和4年度−13年度継続。
名瀬港修築工事
鹿児島県](鹿児島県奄美大島)防波堤、工費127万円、昭和4年度−9年度継続。
尼崎築港株式会社創立
兵庫県]尼崎市及び隣接大庄村鳴尾村の海岸に50万坪の地域を埋め立て、1万トン級の汽船を横付けし得る築港計画を尼ヶ崎築港株式会社が計画。3月16日に丸ノ内工業倶楽部において創立総会を開催、取締役および監査役を決定。社長浅野総一郎、専務内藤正太郎、常務関毅。

−人事−

工学の大先輩バー博士来朝
第5巻第1号本編で紹介された世界一の吊り橋ハドソン橋を初めとし、パナマ運河、ニューヨーク市ベビニユ河など世界の難工事に多大な貢献をしたコロンビア大学教授ウィリアム・H・バー博士が婦人を伴って4月11日来朝。2、3日は京都に滞在し御所拝観、その他関西方面の春を愛でたのち上京、帝国ホテルに入られた。74歳の高齢とは思われぬ元気である。なお同博士は40年来の親日家で、八田鉄道次官、那波博士、故平井元鉄道院総裁、故広井勇博士をはじめとする工学博士達はほとんどニューヨーク留学中に博士から一方ならぬ薫陶を受けたものである。(博士近影)
バー博士歓迎講演
バー博士の来朝を機に盛大な歓迎会を予定。またこの機会に関門海底トンネル工事および東京地下鉄道工事に関してバー博士の意見発表を乞うことになっている。
安芸杏一氏
内務省横浜土木出張所長工学博士。我が国港湾工学界の権威者にして大震災後の横浜港復興に最も尽力。今回高等官第一等に敍せられたが後進に途を譲るべく退官され、今後はしばらく静養のかたわら研究に従事される由。4月中旬から横浜市保土ヶ谷区神戸上町902番地に転居。
片山貞松氏
内務省下関土木出張所長。高等官一等に敍せられ同時に依願免本官。
佐野利器氏
東京帝大工学部建築学科教授。欧米出張を命じられた。
谷喬氏
満鉄技師として東京支社に在勤中の同氏、今回大連市満鉄本社鉄道部工務課へ転勤。
木原英一氏
鉄道省保線課技師。保線工事視察のため欧米視察を命じられ、4月上旬出発。
三好新八氏
鉄道省東建の技師で欧米出張工事研究中だった同氏、4月初旬帰朝。
田辺兵庫県土木課長
内務省から工事視察のため3カ月間北米合衆国に向け3月末出発。
藤田東京府土木部技術課長
内務省から工事視察のため1カ年欧米に出張を命じられ3月末出発。
木津正治氏
3月下旬、内務省下関土木出張所より横浜土木出張所長に栄転。明治40年の東京帝大土木科出身、関門工事に精勤。ドイツ・ハンブルグ港の研究家としても知られる。
村幸長氏
3月下旬、内務省土木局第一技術課より下関土木出張所長に栄転。明治37年東京帝大土木科出身。渡良瀬川改修工事の完成者として知られる。
井口鹿象氏
内務技師狩野川改修事務所長に任ぜられた。岐阜県土木課長、内務省東京土木出張所の江戸川改修事務所長など歴任。
篠瀬玉造氏
東京芝浦三ノ一の東京高等工商学校の先任教授として今後土木工学および電気工学の講座を担任。
湯田玉水画伯逝く
南画界の巨人湯田玉水画伯が4月3日、市外ヒブスマ町大原の自宅で肝臓癌のため逝去。享年52歳。帝展委員、日本南画院参事。第4巻第1号表紙に近作「荘子書冊」の一部を掲載。

−雑報−

煉瓦の規格統一さる
煉瓦工協会では商工省の告示に準拠して煉瓦寸法を改正、4月1日より売出すことになった。新型は旧型に比し少し厚を減ずるだけでそのほかには大差無し。

第5巻第4号第5巻第6号


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