第4巻第11号 昭和3年11月発行 （1928年）
http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/04-11/04-11-0933.pdf
※著名工事視察の手引
−鉄道−
- 新線工事
- 10月5日、次の新線建設を決定、各建設事務所で近く入札に付す。1．仙北東線（宮城県）のうち愛子熊ヶ根間5マイル1．釧網線（北海道）のうち札鶴美留和間18マイル1．土賛北線（徳島県）池田駅付近40チェーン延長
- 丹那トンネル
- ［静岡県］最難工区を脱し一日三尺以上の掘進が容易に。向こう10年はかかるとされていた同水道工事に光明。難航した個所については第3巻第6号、第3巻第7号、第3巻第8号、第4巻第2号などに報。
- 土工二十名に保険
- ［東京府］四谷駅改良工事の屋根切作業にあたる土工20名に保険を。大倉組施工。
- 九州電気軌道
- ［福岡県］九州電気軌道会社は山田正隆氏を建設部長に迎え、福岡門司間の高速電車軌道工事に着手。同建設事務所は福岡市下土居町博多ビルディング。
- 三陽線
- ［山口県］藤生由宇間の3マイルの複線工事、9月15日に門鉄保線課にて入札。広島市坂本組が16万円で落札。
- 作備線
- ［岡山県］岡山建設事務所の月田刑部間は石田技師、因備線川井那岐間（国屋村見峠に大小二ヶ隧道あり）は出島技師の担当にて10月起工、約3カ年を要する見込み。
- 鉄道乗入諸相
- 京成電気鉄道浅草高架線問題は例の通り市の一大疑獄を生じて行悩み。（http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%AC%E6%88%90%E9%9B%BB%E8%BB%8A%E7%96%91%E7%8D%84%E4%BA%8B%E4%BB%B6）
- 東武鉄道
- ［栃木県］日光町新橋乗入は町民が反対。
- 阪急電鉄
- ［兵庫県］神戸市乗入は地下式で許可になっていたが高架式に変更して反対を受けている。
- 樺太庁鉄道
- ［樺太］豊原・真岡間55マイル4分の豊浜線は大正10年起工以来満8カ年と工費1472万3400円を投入して本年9月に竣工。（第4巻第12号「樺太鉄道豊真線路平面図及び写真」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/04-12/04-12-0942.pdf）
- 大地下鉄道
- ［東京府］財界有力者ら30余名発起による大地下鉄道の計画案が報じられている。東京市電気局の地下鉄建設権41マイルを民営とし、京浜、京王、玉川、王子、京成、東京地下鉄等も加えて「高速度電車会社」を設立せんとするもの。
−建築−
- 相愛館
- 「世界一家」の理想のもとに内鮮人の融和に努めつつある相愛会、昨年11月から総工費30余万円で本所錦糸公園脇に会館を建設中だったが、このほど完成。敷坪600坪延べ坪850坪鉄筋コンクリート造3階建て。各階詳細あり。
- 農事試験場
- 府下西ヶ原に9月落成。鉄筋コンクリート3階建延べ坪1800坪設備東洋一。
- 深川清澄園に図書館
- ［東京府］震災後第一の復興図書館。以前深川公園にあったもの。鉄筋コンクリート造3階建て、延べ坪510坪、総経費30万円。昭和2年春起工本年7月落成。図書は特に労働、社会問題のものを集めている。新聞雑誌の閲覧無料、書籍貸し出し2銭、持出し1カ月50銭。
- 大阪中央電信局
- ［大阪府］北区堂島浜通りに9月竣工。分離派近世式、鉄筋コンクリート造6階建て、延べ坪約4000坪、東京丸ノ内の電信局と同形。工費237万円。
- 警察病院
- 警視庁管下の警察およびその家族救療の目的で麹町区富士見町に建設中だった警察病院がようやく完成。鉄筋コンクリート造4階建て、1383坪、工費50万円。
- 下谷の五条天神
- ［東京府］下谷の五条天神社は上野忍ヶ岡に竣工。工費6万円、総桧造り、大工は名古屋の宮大工、石工は京都から腕達者を呼んだ。拝殿格子天井は結城素明画伯の薬草88種の揮毫がある。
- 帝国教育会館
- ［東京府］神田一橋に竣工。鉄筋コンクリート造5階建て、延べ坪1300坪、講堂社交室宿泊室食堂完備。
- 慈光院
- ［東京府］9月1日、本所被服廠跡に慈光院が落成、入仏式を挙げたが、無届建築ということで府から警告が発せられた。
- 分離派
- 分離派建築展覧会第7回を三越で開催（9月）。
- 台所設計
- 台所設計の募集図案、実物設備の展覧会を松屋呉服店で開催。日々新聞主催、9月開催。
- 襖紙の展覧会
- 10月中旬、銀座松屋の7階に催される。高等工芸学校生徒そのた民間先輩の作品。
- 金沢兼六公園
- ［石川県］兼六公園の前田候別邸成巽閣の謁見室が特別保護建造物に指定される。同建物は2階建て600畳敷の大建築、構法材料等すべて学術上の参考物。
- 建築規則
- 11月からの改正点は ・3階木造家屋は申請認可不要届け出だけで可 ・ビルディング工事の起重機タワー使用は取扱責任者の名を届け出ること ・住宅地域にダンスホール不許可 ・井戸は閉鎖式 ・便所窓に網。
- 常盤座
- 工費70万円、鉄筋コンクリート造3階建て、1500坪を浅草に新築。戸田組請負。
- 福山市庁舎
- ［広島県］第4巻第8号報の詳報。京都帝大教授武田工学博士の設計、東西168尺、南北57尺の木造洋館2階建て、総坪451坪5合、工費8万5000園。市吏員の事務能率を増進するため議事堂は市庁舎と分離して公会堂東隣へ建設し、その市会議事堂は鉄筋コンクリート2階建て、階下60坪、階上53坪、工費3万4000円、合計12万円の予算。
- 観音劇場
- ［東京府］浅草公園の観音劇場、百万円の株式組織に変更され、今回鉄筋コンクリート6階建ての本建築をなすことに。地下室は大食堂、1・2階は1500人を収容する映画・演劇両用の大劇場、3・4階へは直通の入り口を設けて大デパートメントとなし、さらに屋上には遊覧にそなえる諸般の設備を整える。
- 軍人会館
- ［東京府］在郷軍人、現役陸海軍人、青年訓練団員の本部会議所宿泊所として麹町区飯田町牛ヶ淵に建設。坪1000坪、工費154万円、鉄筋コンクリート地下堂とも5階建て、設計陸軍省建築課。4年秋起工。
−道路−
- 東京府の環状道路
- 東京府の第一期都市計画事業にかかる環状道路（延長1万7458間）、および放射線道路（延長1万7082間）は明年度に完成年を迎える。大正10年以来の継続工事。第二期道路工事として昭和6年度より毎年1263万円を計上する由。第1巻第4号、第1巻第8号、第2巻第10号、第3巻第4号、第3巻第9号、第4巻第1号に関連報。
- 東京市道路
- ［東京府］市の道路舗装は第一期改良工事44万3000坪を施工、なお200万坪の未舗装があり、来年度は150万円を以て4間以上の道路7万坪を舗装する。（前号にも報あり）
- 京阪国道
- ［京都府］京阪国道の改築起債が認可され、京都府土木部では10月中に起工式挙行予定。村山土木部長は阪神国道工事の経験により土木部出張所を設け、工事の進捗を図ると同時に、近く技術員の新規増員を行なう。
- 雪舟道路
- ［島根県］美濃郡吉田村の雪舟廟に通じる幅2間延長1マイルを県道に編入するよう陳情。
- 伯耆大山
- ［島根県］伯耆大山の登山道は幅3間延長1里5丁を工費3万5000円で工事中。地元住民による。11月中に竣工。
−港湾−
−下水−
- 東京市
- ［東京府］東京市下水道は来年度から10カ年継続予算3500万円で以下の区域に着手。1．芝浦ポンプ場より羽田汚物処分場に至る。2．日本橋、神田、京橋の全部。3．古川以北の芝の一部、本所深川山手の一部。
−人事−
- 広井博士逝去
- 東京帝大名誉教授、全土木学会長。10月1日逝去。
- 山田正隆
- 鉄道省神戸改良事務所長。9月に官職を辞し九州電気軌道会社に入社、取締役兼技師長に就任。
- 古川淳三
- 鉄道省仙台鉄道局改良課長→神戸改良事務所長
- 松村務
- 鉄道省工務局技師→東京鉄道局改良課長
- 広瀬一郎
- 鉄道局技師→松村課長不在中代理。
- 大田明治
- 東京鉄道局改良課長→鉄道監察官。
- 竹股一郎
- 鉄道省北海道建設事務所長→東京建設事務所長。
- 阿部強
- 鉄道省建設局技師→北海道建設事務所長。
- 佐藤忠三郎
- 鉄道省北海道建設事務所技師→阿部所長不在中の代理。
−会合−
- 万国工業会議準備進む
- 来年秋期本邦にて開催せらるる万国工学会議について。7月日秩父宮殿下を総裁に奉載、昭和4年10月29日〜11月6日を会議日程とする。その前後に工事・工場の見学、名勝地視察など。
- 交通協会
- 海陸交通に関する研究調査を行ない、関係各庁の諮問に応じ、または建議する目的で交通協会発足。鉄道、逓信、内務、参謀本部その他民間当事者が出席して9月中に第一回理事会を開催。理事者名一覧あり。
- 早稲田大学理工学部二十周年記念式（誤字？週年→周年）
- 10月14日挙行。部長山本忠興博士の挨拶、高田総長、来賓総代井上匡四郎子爵その他の講話、午後は園遊会および教室を解放して理工科の縦覧を許した。特に同理工学部に基礎工学科が設けられたことに注目が集まった。
−雑録−
- 泣龍
- ［東京府］日本橋矢の倉の料亭福井楼の舞台座敷で、日光薬師堂天井の泣き龍と同様の音響反響が起こることが評判になっている。
- 関東目地工組合
- なるものが組織される。煉瓦石積工の同業組合ではなく（？）一般に労働者の労働条件改善を目指し階級的陣列を敷こうという労働団体であるらしい。
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日本の廃道 nagajis （http://www.the-orj.org）