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第6巻第9号

第6巻第9号 昭和5年9月発行 (1930年)

第6巻第8号第6巻第10号

http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/06-09/06-09-1314.pdf

※カット写真・竣工近き日本海電気小川口発電所堰堤

ベーリング海峡埋立ての大計画
海外]ソビエト・ロシアのベーリング海峡埋立計画案はヴォルガ・ドン両河間運河開削に劣らぬ大計画としてロシア専門家によって真剣に研究されていたが、13日のウラジオ放送はベーリング海峡埋立案に関連して実地調査を行なったボローニン技師の報告を発表した。曰く『シベリア・アメリカ連絡鉄道計画の一部をなすベーリング海峡連絡問題は最初海底トンネル案と大鉄橋架設の2案があったが、いずれも時代に適せず、今やベーリング海峡の埋立計画がもっとも合理的だという結論に達した。海峡にはいくつもの島があり、かつ最深海底500mに過ぎず、この埋立に要する経費は5億ルーブルと計上される。この埋立計画のもっとも重大なる意義は暖流と寒流に大変化をおよぼし、シベリア大陸の気候が暖流によって温暖地帯化する点にある』。ちなみにボローニン技師はかつてムルトン鉄道建設に際し埋立工事に実際の経験を持っている。
関門隧道中止
山口県][福岡県]関門連絡トンネル工事の起工は他の急を要する改良工事に予算が不足している現状をもって実現困難とされ、このために特設された関門派出所を近く閉鎖することに内定した。第4巻第4号第4巻第12号第6巻第1号等関連報。
物見隧道進行順調
鳥取県][岡山県]国鉄因美線の最難工事である物見隧道は一昨年10月着工以来工程順調に進捗し最近までに鳥取側約560m、津山側1300mの個所まで掘削。従来より掘削にオーストリア式工法を採用し、一日南北とも3m強づつ進行中。なお今後この調子で進めばいよいよ明年3月末には貫通する予定。第5巻第1号第5巻第11号に関連報。
高架線のスパン利
大阪府]大阪市都市計画のなかで梅田十三線堂島大橋十三線の間に架設される鉄筋コンクリート造の高架線について。前者は中津から幅15間の高架をもって十三橋に至り、後者は大仁から同15間の高架を十三橋に至るもの。目下市土木部工務課においてはその高架線下の空間をいかに利用するかということについて考究中。自動車ガレージ、倉庫、店舗等に利用される見込み。
大阪地下鉄の工事進捗状況
大阪府]大阪市高速電気鉄道工事について。本年1月起工以来第一回起債の814万5500円をもって失業救済を加味し、施工区域も大江橋市庁前、淀屋橋、本町間0マイル90に縮小され、地下道掘削工事に取りかかっているのみであるが、去る5月市会の決議を経て主務省に申請中の起債1300万円が認可されれば現在の『穴を掘るだけ』の状態を脱して積極的に進捗を計る予定である。なお右区間内の地下停留場は△大阪駅前△淀屋橋南詰△本町4丁目△心斎橋南詰の4個所で、工事予定は右停留所の建設、舗装、電車製作(鋼製120人乗り)変電所1個所建設などである。かくしてとりあえず昭和7年までには大阪駅−心斎橋間に地下電車を開通させようという計画。
鉄道隊の援助で超スピード進行
奈良県][三重県]目下着々と工事進捗中の参宮急行電鉄について。東口宇治山田松坂間、西口桜井榛原間はすでに竣工し、残り工事に対して着々と進行が続けられている。同線の最難工事と称せられている青山トンネル2マイル1分も最近漸く竣工し、8月初旬引き渡しを行なうことになった。次は施工中の難所と目されている青山隧道から阿保町に通じる線路敷設であるが、現在使用している土工2000余名のほか千葉鉄道連隊の下士卒約300名が演習のため出動することとなったので、近く超スピードをもって進捗を計り、もって全長60マイル工費3600万円を要した大工事も本年末までに全部竣工する見込み。第4巻第6号第5巻第11号第、5巻第12号に関連報。
礼泉安東間を9月上旬起工
朝鮮朝鮮鉄道会社の礼泉−安東間に対する延長工事に愈々着手。該区間の延長約20マイル、これに対する工費約250万円であるが、近く各部課ごとに工事入札を行ない、9月上旬頃より線路敷設工事に着手せられることとなった。
全世界の発生電量
海外]最近英国の調査によれば、全世界に渡る電気年発生量の概算は3000億キロワット時。そのうち北米合衆国が1/4を占めている。第2位はドイツの340億キロワット時、続いてカナダの180億キロワット時。グレートブリテンおよびフランスは160億キロワット時で第4位。注目すべきはカナダであって、同国の人工が1000万人以下であるにも関わらず高位を占めている。これは大きな水力発電の開発が容易で、一部はパルプおよび製紙工業によって莫大な電力が消費されるからである。またカナダでは電気エネルギー発生の約8%を北米合衆国に輸出している。
丸沼一ノ瀬両貯水池工事
群馬県]上毛電力株式会社では計画中の発電所に丸沼、一ノ瀬両発電所を計画中。これは利根川支流大瀧川上流の菅沼、丸沼、大尻沼を貯水池として利用するものである。同社では目下この貯水池工事に専念しているが、来る11月中には竣工の運び。丸沼発電所で利用する菅沼貯水池は堰堤の高さ20尺、長さ40尺、有効水深50尺、貯水量3億6000万立方尺。丸沼発電所工事に着手すれば連絡隧道180間。この貯水池によって渇水時33個の水量増加を来し得る。一ノ瀬発電所に利用する丸沼及大尻沼貯水池は堰堤高さ120尺、長さ220尺、有効水深80尺、貯水量4億7000万立方尺。一ノ瀬発電所への隧道は現在124間だけの工事竣工を見せている。なお丸沼の堰堤は中空式堰堤でこの貯水池によって渇水時75個の水量増加を来し得る。上毛電力はこの両貯水池の完成後約1カ年の後にいよいよ丸沼、一ノ瀬発電所の工事に着手する。同社は将来大瀧川下流において白根、東小川、鎌田等の予定発電所を控えている菅沼より鎌田に至る総落差は実に3000尺に達する。
写真・竣工近き日本海電気小川口発電所全景

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