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第6巻第2号

第6巻第2号 昭和5年2月発行 (1930年)

第6巻第1号第6巻第3号

http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/06-02/06-02-1196.pdf

※著名工事視察の手引

※イラスト変更

復興帝都御巡幸
東京府]帝都復興記念式典が3月24日に行なわれることになり、天皇陛下の市内御巡行の道筋が発表される。宮城−馬場先−桜田本郷町−芝口−第一号幹線を岩本町−神保町−九段上−神保町−水道橋−壷岐坂−湯島五丁目−同朋町−上野を経て坂本町−言問橋−源森町−石原町一丁目−蔵前橋−浅草橋−清洲橋−黒江町−永代橋を渡って馬場先に出、宮城へ。

−鉄道・隧道−

「軌条の生命」を提げて 斎藤博士万国鉄道会議へ
本年5月中旬2週間にわたってスペイン・マドリードで開かれる第11回万国鉄道会議に、大阪住友製鋼所の斎藤省三博士(金属研究の権威・本多光太郎博士の高弟)が嘱託として出席することに。民間から代表者を出すことはこれまでなかった。博士は同会議で「車輌の外輪対軌条の磨耗に関する研究」を発表する。去る12日出帆の大洋丸でアメリカ経由で開催地へ向かったが、出発に先立ちコメントを。要約「現在我が国に利用しているのは炭素0.45−0.60%含有の鋼が使われているが2カ月−6カ月で使えなくなっている。炭素鋼と合金鋼はいずれがよいかはまだ判っていないが、レールと車輪の鋼の硬度が必ずしも同程度でなくてよい、車輪の鋼硬度を硬くしてもレールの磨耗度には何等変わりないことが判った。昨年12月に鉄道省工作局車輪課、工務局保線課、官房研究所、八幡製鉄所、住友製鉄所とで打ち合わせ、本年から作る客貨車の車輪外輪はすべて抗張力80キロ以上/cm2の硬いものにすることになった」。なお博士はこの会議を機会に約8カ月の予定で欧米各国を巡り研究所や著名工場を視察、ベルリンの世界動力会議にも出席される。
囲み記事
昨秋行なわれた万国工業会議に出席のロバート・リッジウェー氏による視察の途中のひとこま。大阪城内で蛸石を見学する同博士。
愈々貫通したる 東洋一の清水隧道
新潟県][群馬県]大正11年8月起工、7年余の歳月と工費705万6000円を費やした同隧道、29日午後2時5分、江木鉄相の発破により貫通。第6巻第1号ほか関連報。
清水隧道工事で 世界的の新発見
清水トンネルの工事で発生した現象を東京帝大工学部教授山口昇氏が力学的に説明することに成功。従来は浅い砂地の地盤がもっとも危険であると見なされ、非常に深い隧道は比較的危険が少ないと考えられていたが、清水隧道最深部(昨年1月頃、茂倉岳直下約4000尺付近)では導坑側壁の岩盤が貝殻状に剥離し鉄砲玉のような勢いで飛び出す現象(「山はね」)が起き、最大畳一枚位にもなるその岩片で死傷者も出たほどだった。山口博士はまず地盤と同様の自重を持った弾性体として寒天を採用、実験を重ねた結果複雑な原因を力学的に証明し得た。
伊太利に於ける 鉄道電化の進況
海外]イタリアで最近発表された鉄道統計によると、1928年中に同国鉄道で電気運転によるものが全長1060kmから1251kmに増加、その他電化工事進行中のもの883km、また電気運転による列車と全列車との割合は10パーセントから12パーセントに増加した。
ジブラルタルの 海底鉄道愈々着工
海外]ヨーロッパとアフリカを結ぶジブラルタル海底鉄道はいよいよ今春から工事を開始する。同計画の設計者・侍従武官エウエノイス中佐は工事の為昨年末にマドリードを出発、ジブラルタル海岸へ出張した。スペイン政府はこの工事に対し測量費、地質調査費等を出資することを承認。工事はアフリカ側から始め、モロッコのアルカザル・セグイルを起点として海底トンネルを開削することになっている。

−橋梁−

三重県で東洋一の架橋計画
三重県三重県は工費約280万円の予定で揖斐川長良川に延長1110m・幅員7mの鉄橋を架設する計画を立て、その設計を増田淳に依頼、すでに出来上がっている。三重県愛知県境に架設され、実現すれば東洋最大の公道橋となるべく、工事は国庫補助210万円が決定次第着手される模様。
愛知県の木曽川架橋
愛知県]上記揖斐長良橋に連絡すべき木曽川架橋についても漸次具体化しつつある。
徳島市の可動橋
徳島県]同市三頭に架設中の長150フィート・幅員15フィートの人道橋について。総径間5連のうち50フィート径間1連が可動橋となるが、リンクバランス・システムと称する新しい形式のもの。設計者は昨年芝浦に東洋一の可動橋を架設した山本卯太郎氏。新システムの特徴は従来のものの約1/4の馬力で開閉できる点で、同橋の動力は約5馬力。今春3月上旬竣工。(第6巻第5号「徳島市に架せられた最新式跳上橋」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/06-05/06-05-1242.pdf 参照)

−建築−

基督教青年館竣工
東京府]昨夏神田美土代町に100万円で起工した東京基督教青年会館がこのほど竣工、18日開館式。鉄骨鉄筋コンクリート造、アメリカ風の6階建で建て坪1668坪、地下室は食堂理髪室法律相談所、1階は社交室、2階は講堂とクラブ室、3、4階は学校、5、6階は78室の独身者アパート、屋上に礼拝堂。第2巻第7号第5巻第12号に報。
囲み記事
京都渡月橋見物中のリッジウェー博士。
東京市の復興小学校建築
東京府]昭和5年末をもって全部完成する予定。全新築校117のうち、昭和4年末において105校が竣工、目下工事中11校、設計中のもの1校。いずれも明春までに完成見込み。

−公園−

広瀬中佐の銅像神田橋新公園へ
東京府]東京市公園課は神田橋畔の旧神田区役所仮庁舎跡600坪に公園を設置することになり、近く市会に提案、承認を待って5月中ごろから工事に着手することになった。外国の諸都市に見られる路傍少憩公園的のもので、一帯に植樹し中央部に60坪の露台を設けて少憩用に備え、別に藤棚小亭なども作るが、外濠に面した所は児童遊園地として砂場・ブランコ台を設備する計画。また区画整理のため行き場に迷っていた広瀬中佐の銅像はここへ移されることになったが、予算は1万5000円であると。第5巻第6号に関連報。
8万人を収容する大野球場を建設
東京府]東京市ではこのほど芝浦の埋立地に米国大リーグ所属の野球場に比肩する大野球場を建設する計画。広さは神宮球場に倣い、優に8万人を収容し得る2階建の大スタンドを周囲に巡らす予定。市当局としては同埋立地は総坪数18万坪もありながら土地が隔離しているため買い手がつかず、荒れるに任せてあるので、この球場を含む公園としたならば約100万円程度のスタンド建設費も償却できるだろうと。またそれが残る10万坪の売却にも有利になるはず。遅くとも秋のシーズンまでには完成すべく、近く工事に着手する予定。

−人事と雑録−

宮部金吾博士 学士院会員
北海道帝国大学名誉教授正三位勲二等農学博士宮部金吾氏は1月9日付で帝国学士院規程第二条により帝国学士会員をおおせつけられた。広井勇博士と札幌農学校の同窓同信で、植物学者の国宝的権威者。
岡部博士民間へ
内務省技師より東京市役所橋梁課長に転じて間もない工学博士・岡部三郎氏は昨年末東京市役所を円満辞職して尼崎築港株式会社に入社、同社の幹部として技術的手腕を振るうことになった。同時に兵庫県西宮市外阪急線夙川北蓮毛847に転居の由。
浜田稔氏 工学博士
東京帝国大学工学部建築科出身の浜田稔氏は先年来より佐野利器博士の指導のもとに鉄筋コンクリート構造の研究に精進しつつあったが、1月8日付で工学博士の学位を授与せられることになった。
藤田周造氏帰朝
昨年3月から欧米各国へ出張・工事視察中だった同氏が無事帰朝。従前通り東京府土木部に勤務の由。
川口利雄氏帰朝
昭和2年4月来欧米出張・工事研究中の同氏も無事帰朝、従前通り鉄道省東京第一改良事務所に勤務の由。
江上夫人逝去
かつて工事画報に外国工事関係の記事を執筆し関係の深かった米国工学士江上慶次郎氏の夫人・ヒサコ氏が1月17日に逝去。

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