!!!第6巻第1号 昭和5年1月発行 (1930年) 《 第5巻第12号 |第6巻第2号 》 http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/06-01/06-01-1181.pdf ※著名工事視察の手引 ::鹿島神宮参道に竣工した神宮橋 :::[茨城県]今号表紙。所在:茨城県行方郡延方村延方より同県鹿島郡豊津村大船津 路線名:麻生−鹿島線 河川名:北浦川 橋長:878m(I型鋼桁10m*80連、鉄筋コンクリートT型桁6m*13連) 幅員:6.2m、総面積:4741平方m 総工費:23万8000円(橋梁費23万1750円、取付道路6250円) 設計施行:茨城県土木課長岩崎雄治 施行方法:請負(施行人逢沢寛) 起工:昭和3年9月28日 竣工:昭和4年11月8日 使用人員:職工3450人、人夫2万1900人 計2万5350人 使用鋼材 I型鋼材476トン、鉄筋丸鋼182.3トン コンクリート:368立方m !−鉄道− ::フラットスラブの秋葉原駅工事 :::[東京府]鉄道省東京第一改良事業所で施行中の秋葉原貨物駅工事について。フラットスラブの高架線への採用は日本初、ビーム(梁)を使用しない最も経済的な設計。長三角形をなしその延長760フィート、最大幅115フィートにおよぶ大きなもの。第3巻第4号、第3巻第7号に関連報。第4巻第12号にも報(竣工予定時期等) ::大阪市の高速度電鉄工事始まる :::[大阪府]市が昭和4、5年度の失業者救済事業として施行する高速度電気鉄道工事は1月中に下記着手。総延長0.9マイル。 :::(イ)大阪駅構内省線高架下にあたる大阪駅前停留場の一部(複々線停留場延長0.07マイル) :::(ロ)大江橋北詰より淀屋橋南詰に至る川底線(複線延長0.19マイル) :::(ハ)淀屋橋停留場全部(複線停留場延長0.14マイル) :::(ニ)本町停留場北半分(複線停留場延長0.07マイル) :::(ホ)淀屋橋本町間地下線(複線延長0.43マイル) ::日本電力会社 :::[富山県]黒部川沿線の猫又−木屋平間は電気・ガソリン機関車併用で昨年12月10日より運転開始。 ::武藤中央電気鉄道 :::[東京府]浅川−高尾間4マイル41チェーンのうち浅川−御陵前までが近く開通の由。 ::庄内電気鉄道 :::[山形県]鶴岡起点の0マイル9チェーンの湯野浜温泉間7マイル21チェーンは昨年秋に竣工、なお次の工事に近々着手。 ::北陸工業 :::[富山県]北陸工業会社の富山県婦負郡保内村(越中福島)同郡山田郡(妙巌)間10マイル15チェーンは工事申請中だが動力はディーゼル機関車に変更する由。 !−隧道− ::清水隧道愈々貫通 :::[新潟県][群馬県]東洋第一(世界第九位)の上越線清水トンネル3万1832尺が12月29日にいよいよ貫通することが確実に。貫通近しと見た鉄道省は1日平均9尺の掘削進行を1日15尺を達成すれば倍額の賃金を出すことにしたところ、12尺8寸、沼田口と長岡口では25尺づつ進む好成績で(nagajis注:数字が逆?両口12尺半で25尺?)、トンネル掘削進行のレコード樹立が確実に。残り400尺の所から両方の掘削音が聞こえ出し進行度合いはますます増加。(nagajis注:第5巻第12号青山トンネル記事参照。3km強のトンネルを1カ年半で貫通) ::鉄道改良計画委員会 関門隧道計画案に始る :::鉄道省では5年度以降の鉄道改良計画の根本的立て直しを行なうため、青木次官を委員長とする改良計画委員会を組織。11月19日に委員を任命、同20日第一回計画委員会を開いた。新施設として同委員会に付議された関門トンネル計画案(5カ年計画・工費2200万円−3000万円で山口県幡生駅から分岐し彦島に入り大里と小倉の中間の新町に至る2マイル弱の新線を敷設、これによって九州と本州を連絡するもの/彦島南端から新町に至る海底トンネルが最難工事でこの設計のために2カ年かかった)については最善を期するため目下来朝中のニューヨーク地下鉄道技師長リッジウェー氏に委嘱し11月29日実地調査を乞うた。 !−橋梁− ::迎春の帝都を色彩る新橋梁 :::(nagajis注:昭和4年末時点で施工中の橋梁一覧) :::浅草橋 長35.8m、幅33m、鉄アーチ型、工費24万6000円、竣工12月一杯。 :::和泉橋 長35.7m、幅44m、鉄アーチ型、工費29万8000円、竣工12月一杯。 :::比丘尼橋(京橋) 長42.2m、幅32.7m、鉄筋コンクリートアーチ型、工費16万7000円、竣工12月一杯。 :::三原橋(三十間堀) 長30.2m、幅36m、連続鋼鈑桁、工費20万円、竣工12月一杯。 :::紺屋橋(京橋) 長30.8m、幅11m、連続鋼鈑桁、工費5万2000円、竣工12月一杯。 :::三吉橋(京橋区役所前) 長82.8m、幅15m、鋼鈑桁3連、工費19万1000円、竣工12月中旬。 :::柳島橋(押上終点) 長43.3m、幅16.5m吊鈑桁付鋼鈑突桁、工費14万2000円、竣工12月一杯。 :::京橋区三十間堀から劇場街の木挽町へ通じる便利な『にぎはひ橋』(長33m、幅15m、鉄橋、工費8万3000円)は12月3日開橋。 ::囲み記事・ニュウスレコードの朝鮮水電記事 :::[朝鮮]世界一の工事雑誌・エンジニアリングニュースレコード誌が日本の工事状況を時々掲載するようになったのは注意すべきことである。昨年は東京市技師江守保平氏の木塊舗装の記事および復興局田中豊技師の清洲橋設計の記事等を掲載。また10月31日号には巻頭記事として松村種雪氏の朝鮮水電の工事状況を掲載。同工事はかつて工事画報においても久保田豊氏により詳報された(第3巻第6号)所であるが、落差の大きなこと、出力の大きなこといずれも我が国において第一等のもの。万国工業会議にも発表されていないこの工事状況をニュースレコード誌が巻頭掲載した着眼に注目すべきである。同工事詳報を第6巻第2号に掲載予定。(ニュースレコード誌写真あり) ::鉄桁架設に一新機軸 :::鳶職として有名な上州屋事西杢太郎氏が愛知県三河鉄道の挙母線矢作川鉄橋架設工事に新案の鉄桁架設機を使用。時間的にも経済的にも非常な節約ができた由。ちょうど天秤棒で荷(=鉄桁)を担っていって前の荷をおろすのと同様の仕組み。(第6巻第3号「ハネ上げ式架桁法(上州屋西浦氏の近業)」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/06-03/06-03-1203.pdf) !−水道− ::最近に於ける全国水道工事個所 :::新潟県 水道拡張 :::酒田市 新設 :::会津若松市 (最近竣工) :::足利市 新設 :::高田市 新設 :::東京市 拡張 :::横浜市 拡張 :::横浜市 拡張 :::長野市 拡張 :::金沢市 工事中、地方として全国第一 :::浜松市 新設 :::豊橋市 同 :::岐阜市 同 :::津市 (最近竣工) :::神戸市 拡張(珍しいかさ上げ工事) :::久留米市 新設 :::八幡市 新設 :::戸畑市 新設 :::姫路市 最近出来 !−建築− ::素晴らしい天文台アインシュタイン塔 :::[東京府]一昨年予算を取り昨年9月中旬に起工された東京大学付属天文台(市外三鷹村)の「アインシュタイン塔」について。今年3月頃から天体観測の使用されることになった。鉄筋コンクリート造、高さ地上18m、その上部に直径650cmの反射鏡と450cmのレンズが備え付けられ、それが太陽の動く方向に従って移動しつつ天体を観測し、レンズを通して塔地下室に導かれ、光学的研究やその他新しい天体の観測がなされる。本格的なものはドイツに同様の建物があるだけ。 ::三宅文庫の誕生 :::昭和3年12月1日に日本橋区役所の工事現場にて殉職した東京市建築課技師・三宅勤氏(三宅雪嶺博士の子息)を弔うため、同工事を請負っていた鴻池組が中心となり、氏が収集していた図書類を納める図書館が建てられた。鉄筋コンクリート地下共3階建、工費5000円は鴻池組提供で今年1月中完成予定。 ::CKの10K放送所 愈々開始の運び :::[愛知県]名古屋中央放送局の桶狭間10キロ放送は師団廓内の連絡線架空工事を余すだけとなってほとんど完成に近づき、逓信省の認可を得しだい年内に放送開始の運びとなった。総工費70万円、総敷地3514坪、鉄筋平家建、東海最高となる55mの鉄塔2基(放送電力の減衰を防止するため鉄塔と大地とが碍子によって絶縁された日本最初のもの)。その他タンクおよび導電圧調整室等がある。 ::囲み記事・聳立する925フィートのビルデング :::[海外]昨年の秋ニューヨーク市に新たに建てられたクライスラービルディングが808フィートの摩天閣として世界第一位を誇っているが、それより約120フィートも高いビルが起工され2年後に完成する。City Bank-Farmers Trust Companyのビルで高さ925フィート、71階建のビルディングを計画、Fuller Companyの請負。本年2月基礎工事を終え、来年1月には全部竣工の予定。(ビル完成予想図あり)(第5巻第11号に150階建て建築の報もあり) ::聖ニコライ堂 震災前に復活 :::[東京府]神田駿河台のニコライ堂が信徒の協力により復旧。10月13日から4日間にわたり盛大な復活式を挙げた。岡田信一郎氏の設計で清水組請負、昭和2年9月着工、工費18万円は全国の信徒の献金による。外観は被災前と同じで内部に多少の変更が加えられたのみ。(第2巻第5号、第2巻第11号、第3巻第3号、第3巻第9号、第3巻第12号に関連報) ::新国会議事堂 :::[東京府]工事は予定のごとく着々進行中だが、正面玄関に異彩を添える御影石に鳳凰を彫りつけた大装飾が11月中に完成、12月11日朝取付を終わった。(第2巻第1号、第2巻10号、第3巻第4号、第5巻第1号に関連報) ::日本銀行新築 :::[東京府]第一期工事の新館約1000坪は去る11月中に地鎮祭を挙行、ただちに起工された。工費は80万円。 ::簡易保健局落成 :::[東京府]柴区赤羽町一に竣工、11月20日落成式。地下室を有する鉄筋コンクリート4階建の堂々たる建物。 ::大連郵便局竣工 :::[満州]ちょうど2年の工期を経て大連郵便局が完成。近世復興式建築、建て坪696坪余り、工費59万円、今春3月から開業予定。 ::加州に飛行ビル :::[海外]ロサンゼルス市が大規模な飛行ビルディング建築の計画を立てている。工費2100万円、長980フィート、幅152フィート、地上15階の屋上(約4430余坪)を飛行機発着場にしようという趣向。 !−階と人ー ::マルクス博士 :::本号30ページ掲載のマルクス博士(写真2列目、田辺朔郎博士の隣席)について。スタンフォード大学の名誉教授。青年時代に広井勇博士とともにミシシッピー川改良工事に勤務。昨年11月26日汽船タフト号にて横浜出航。 ::鉄道協会の講演 :::昨年鉄道協会にてツエッペリン飛行船の来航に関する講演などがあった。11月19日のニューヨーク市高速鉄道技師長ロバート・リッジウェー博士によるニューヨーク市地下鉄の工事説明は非常に参考となった。当日は八田前鉄道次官がリ博士を紹介し、安倍東京市電高速鉄道課長なども説明を助けられた。翌20日には鉄道省工務技師柳生義郎氏が沈埋式による水底隧道の工法を米国の実例により幻灯および多数の図面にて3時間半におよび詳説するところあった。その一部は本号にも紹介している。なおリッジウェー博士は丹那隧道や関門隧道の設計に寄与せられた功績を認められ勲三等に叙せられるとのこと。 ::幾原行次郎氏 :::徳島市技手。今回欠員中であった同市土木課長の職に技師として就任。 ::囲み記事・世界一の摩天楼で 天井知らずの紐育 :::[海外]クライスラービルの報。それまで世界一の摩天閣を誇っていた791フィートのウールオース・ビルディングを凌ぐ808フィートの大建築。経費総額3000万円。米国不動産協会長スタンレー・ケー・グリーン氏の意見によれば「昔の大建築はただのような労働費でただ芸術品としてのみ価値があったが、現在の理想的大建築は芸術、実用、経済の3点から考慮されなければならない」と。(クライスラー・ビルディング写真あり) 《 第5巻第12号 |第6巻第2号 》