第3巻第10号 昭和2年10月発行 (1927年)
http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-10/03-10-0606.pdf
−鉄道−
- 建設線工事決定
- 鉄道省の既定計画で本年度より新たに工事に着手すべき建設線12線を決定。近く工事請負入札を行なう。
1.沼田札幌間(北海道)沼田口より 工費50万円 1.上磯木古内間(北海道)上磯口より 工費60万円 1.今泉坂町間(山形県)両方より 工費36万円 1.小梅小淵津間(長野及び山梨県)小淵津口より 工費45万円 1.大町糸魚川間(長野及び新潟県)大町口より 工費30万円 1.木更津大原間(千葉県)大原口よりは既に工事に着手しているが、さらに木更津久留里間の改良 工事に着手する 工費80万円 1.若桜郡家間(鳥取県)郡家口より 工費30万円 1.新見三好間(岡山及び広島県)三好口より 工費30万円 1.木次落合間(島根県)木次口より 工費50万円 1.三原呉間(広島県)三原口よりは既に着工済みだが近く呉口よりも工事に着手する 工費40万円 1.貴生川加茂間(滋賀県、京都府)未定 工費調査費3万円 1.伊万里佐世保間(佐賀県及び長崎県)両方より 工費30万円
- 開通近き地下鉄
- [東京府]浅草上野間第一区1マイル半の工事がほとんど竣工し、10月10日開通に内定。日本最初の地下鉄として非常に注目されている。上野から万世橋に至る第二区間1マイル1分の工事は大林組請負で7月10日から着手し、来年一杯には完成する見込み。工費は約200万円、車輌代等入れても340〜350万円見込み。なお第一区開通後の需要については1日平均25000人とみており、乗車賃は普通10銭(回数券7銭位)、雑収入込み92〜93万円を見込む。支出は1日25万円で差し引き67、8万円の収入。建設費600万円に対し1割1分の利益と計算している。第1巻第2号、第1巻第5号、第1巻第9号、第2巻第5号、第2巻第10号、第2巻第12号、第3巻第2号、第3巻第3号に関連報。
- 東京横浜電鉄
- [東京府][神奈川県]東京横浜電鉄会社の丸子多摩川渋谷間5マイル8分は工費500万円で8月26日完成.開通。これによって渋谷と神奈川間が40分に短縮される。渋谷代官山約1マイルの高架区間、代官山−中山目黒間に長570尺の隧道工事が特徴。
- 阪和電鉄工事
- [大阪府]大阪−伯太間第一期工事は官庁手続き・用地買収がほとんど終わる。この区間中大阪市内の高架線を含む3マイル間を大林組が請負い、9月15日から起工。その隣接区間も10月早々に工事に着手することになった。
−建築−
- 早稲田大学
- [東京府]大隈総長記念大講堂が9月末竣工。間口20間奥行25間、鉄筋コンクリート造4階建、1200坪の、工費100万円、戸田組請負。
- 戸山ヶ原射的場
- [東京府]陸軍省経理部建設課によりトンネル式の射的場を建設中。工費100万円、来春4月完成すれば世界一の設備となる。
- 藤山工業図書館
- [東京府]藤山雷太氏による日本唯一の工業専門図書館が竣工。9月13日芝区白金台町にて竣工式。鉄筋コンクリート5階建、蔵書約6万巻。
- 宮内省内匠寮
- 工務課長北村耕造氏、鈴木、菊池両技師とともに京都の大饗宴場敷地を視察(9月13日)。設計は10月中に仕上がる予定。
- 東京駅
- [東京府]皇族乗車口は工費15万円で大改装し、秋の御大典に準備する。
- 刑務所の文化的改築
- 司法省は全国各都市の刑務所新築移転改築等を行なう。第一期〜第三期に分けて根本的に改善を図る。新築は次の通り。
第二期(注:第一期の誤り?)対象中急遽工事に取りかかるべきものは市ヶ谷、 水戸、小倉、名古屋、小倉、名古屋、神戸、長野など。市ヶ谷刑務所は建築費 150万円。 第二期工事分は山形、静岡、山口、松江、高知、広島。第三期前橋、徳島、大分 (山形、静岡も移転の予定)など15刑務所。 目下工事中で明後年に竣成すべきものは豊多摩、小菅、府中の各刑務所。 最新文明の施設は 欧米各市のように刑務所をして文明生活の一標準として誇り 得るものにする。
- 石川県建築研究会
- [石川県]同会では模範建築設計図案を懸賞募集。設計条件は石川県の気候風土に適するもので、百坪の田園地に建築する延べ坪40坪(1/50の平面・立面図のほか説明書を要する)の中流向き住宅。締切11月15日、賞金1等1名50円、2等1名30円、3等1名20円選外5名5円ずつ。
- 呉市魚市場
- [広島県]建設費充当市価10万円が内務省より認可される(9月16日)。
- 大娯楽場
- [大阪府]大東土地会社社長の小西松太郎氏は南海沿線浜寺公園内に大娯楽場を建設する計画を立てる。工費25万円、大阪池田組の手で設計中。
−帝都復興工事−
- 帝都復興
- ▲1.東京は震災後4年を迎え工事進捗。地区画整理の施行地域65に対し換地面積の決定したもの63、うち完了したもの5、本年末までにさらに10数ヶ地区の完了予定。▲2.横浜市は施行地区数13すべて換地面積決定、区画整理を完了した地区3。本年中には残りも完了する見込み。なお移転を要する家屋数は東京約20万棟横浜2万棟で、これらの7割3分に対しては移転命令発令済みで、その中の6万棟余りは移転を完了している。▲3.道路工事の進捗割合は3割3分、橋梁は最も工事が進み、隅田六大橋のうち三橋は竣工供用されている。聖橋他多くも竣工し歩合は7割を越えている。▲4.運河工事の進捗歩合は4割5分。大公園は3割5分。このままでいけば東京は昭和4年度、横浜は同3年度において復旧工事を完成する見込み。
−道路−
- 自動車道会社続出
- 最近内務省で自動車道路法の議が起きていることを受け、早くも東京市−隣県主要都市間の自動車道路会社(自動車専用道路を設け、乗合自動車・貨物車・自動車の運輸に通行料を徴する会社)を出願するものが出ている。計画者中には単に知名人士の名を利用したもの、計画杜撰なもの、収支の均衡を危ぶまれるものもあるとのこと。自動車専用道路株式会社 発起人堀内良平、穴水要七氏等/一、高尾線 淀橋南多摩郡横山村間 延長25マイル30チェーン、工費270万円/二、成田線 砂町千葉県山武郡二川村間延長40マイル60チェーン 工費495万円/三、日光線 巣鴨町日光町間延長83マイル40チェーン 工費735万円 (注:後半がもう一社の概要とごっちゃになっているため省略。発起人山本基三郎、小島七郎、中島守利、板倉勝憲)
−架空索道−
- 我が国の架空索道
- 現在数およそ400、延長は約1000マイル(地方鉄道の1/3)に達している。この取締は各府県まちまちであったので、逓信省はその統一を計ることとなり、9月3日逓信省令で索道事業規則を公布。10月1日より施行することとなった。この号「旅客用架空索道の利用一例」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-10/03-10-0596.pdf 、「旅客索道の知識」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-10/03-10-0598.pdf、第3巻第11号「旅客索道の知識」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/03-11/03-11-0621.pdf に関連報。三重県矢の川峠の索道の詳細が報じられている。
−橋梁−
- 新様式の吊橋
- [大阪府]大阪市都市計画の一部として淀川新橋(注:桜宮橋)の設計がなされる(設計・大村技師)。橋西詰めが造幣局、東詰めが淀川公園で雄大な趣。主径間3ヒンジ鋼拱式長345尺、両側に鋼鈑桁式径間、全長100間幅12間、工費145万円で本年末から起工。
ー水道と水利−
- 小倉市
- [福岡県]小倉市が大正14年度より昭和4年度まで継続事業として行なってきた下水工事費に充当する起債36万8000円が許可される(9月16日)。
−会合−
- 工学会大会予定
- 今秋開催予定の同会について告知。スケジュールほか。
−人の動き−
- 橋本敬三
- 鉄道工事課長。先月来東京建設事務所長を兼務中だったが今回楠田氏の先任となった。
- 楠田九郎
- 鉄道省熱海建設事務所長として丹那トンネル工事に従事。今回東京建設事務所長に転任。
- 池原英治
- 鉄道省建設局工事課技師。欧米工事視察後の研究的蘊蓄をもって熱海建設時事務所長に転じ、丹那トンネル工事に当たることに。
- 浅間逸雄
- 秋田建設事務所長。長岡建設事務所長に転任。
- 堀越清六
- 長岡建設事務所。岡山建設事務所長に転任。
- 石本喜久治
- 分離派建築会主唱者の1人。数寄屋橋畔の朝日新聞社(第2巻第6号)、日本橋の白木屋ビル(第3巻第3号)を設計。竹中工務店設計部を辞し片岡安博士とともに丸の内郵船ビル内に片岡石本建築事務所を経営することに。
- 瀧淵実烈
- 鉄道省より海外出張を命じられた同氏、10月21日横浜出航の由。
- 上村義夫
- 鉄道省より海外出張を命じられた同氏、10月1日横浜出航。
- 川口利雄
- 同上10月21日横浜出航。
- 新田留次郎
- 朝鮮鉄道局工務課長→辞職(9月19日)
- 藤井真透
- 内務技師。明治神宮外苑管理評議委員(9月15日)
- 折下吉延
- 復興局公園課長も同上。
- 佐野利器
- 東京帝大建築課教授。明治神宮外苑管理評議委員を嘱託される。
- 小林政一
- 東京高等工業学校建築科長。同上。
- 巻彦七
- 東京市土木局長の同博士も同上。
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日本の廃道 nagajis (http://www.the-orj.org)